先日こんなコラムがあった。
私は、この女性と同年代だ。
友人にほぼ同じ状況の人がいた。
彼女は大学の図書館で働いていたが、フルタイム非正規で時給900円、手取りは月11万だった。
聞いてみたら、その大学図書館には正規職員はたった1人しかおらず、その人は大学の偉い人の姪だとかいう話であった。
彼女は薄給に耐えられなかったので、結婚して別の土地へ移って行った。
この記事のブコメは「ダブルワークしろ」とか「もっと努力しろ」とかで、なんかひどいなと個人的には思った。
しかし冷静な意見も。
月収13万円、37歳女性を苦しめる「官製貧困」 | 貧困に喘ぐ女性の現実 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
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司書で副業可も多いが公務員の副業禁止(国家公務員法103、104条)が援用されて手取り十万ちょいから増やせないという図書館職員の例を知っている。公務員でも一定の収入以下なら副業可にすべきだと思う。
2016/09/08 15:20
以前、新潟で、中学校の図書館司書の女性が、生活苦から図書館の本を売って生活費に充当していたという事件があった。
この人の月収はおよそ8万前後。
もし単身世帯であったとしたら、かなりの生活苦になるということは容易に想像がつく。相対貧困の基準ラインを下回っている。
もし月に8万しか収入がなく、法律上ダブルワークも認められないという状況におかれたら、かなりの人が追いつめられるのではないか。
彼女はこの事件を起こしたことでおそらく懲戒処分にされていると思うし、逮捕歴がついたことでその後、まともに働けているのだろうか…。かなり心配になる。
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色々とポイントがあるが最大の懸案は雇用の安定性。どっかの政権が導入した「非正規は5年まで」というルール。これで非正規→正規にするだろう、というお花畑的発想だったんだが、現実は市役所すらしていないよね。
2016/09/08 11:08
いつもいつも思うのだが、この「雇い止め」によってどれだけの人が人生を狂わされてしまったか。しかもこの制度を制定した側は糾弾されることもない。糾弾されないから、制度を改めることもしない。誰も責任を負わないし、追求もできない。しわ寄せは末端へ行く。ごくごく普通の、市井の人々が働く場所を追われて職場を去って行く。
■
前出の図書館職員の記事を読んで、私がふと思い出したのは、ニャートさん( id:nyaaat ) の存在だった。
私はニャートさんのコラムを読むたび、彼女が非常に賢くて、切れる頭脳の持ち主だといつも感心している。
ニャートさんと、記事の女性に共通する点は、
過労で体を壊し、正規職から撤退さざるをえなかった
という点である。
ニャートさんは、過労からパニック障害をわずらい非正規となった経緯をコラムに残している。
過去に過労で体を壊したり、心を壊したことがある人ならわかると思うが、以前とまったく同じレベルに心身ともに回復することはとてもとても難しい。
回復するのがとても難しいからこそ、適切なときに休息をとり、体を壊さないことが一番良いのだが、真面目な人であればあるほど、極限までがんばって、そして壊れてしまう。
そして第一線から脱落したという事実が当人をとことん苦しめる。
だが、脱落者を多く生み出してしまう過酷な職場は、実は人材をうまく活かせていない。
そういう社会は、長い目で見ると逆に損失が大きいのだ。
ブコメに散見されるが、「努力しろ」と煽る人がどこの世界にもいる。
だが努力でなんとかなる問題なら、ここまで日本の抗鬱剤の市場規模はモンスターのように拡大しないはずだ。精神論をぶちあげる人はもっと現実をよく見たほうがいい。
ニャートさんはしっかりした文章を書ける人なので、どんどん才覚を表してきている。過労による一線からの脱落がなければ、優秀な編集者だったと思う。
自分のまわりを見渡すと、過労で倒れ、非正規にならざるをえなかった人が何人かいる。その人たちが本来持っていたはずの能力を発揮できれば、年収は大きく違うだろう。年収が違えば、当然税収だって全然違ってくる。
そして非正規にならなければ、結婚できたり子供を持てたはずの人が、子供がもてなくなれば、少子化がよけいに進んでしまう。
本来であれば働けて、非正規とは比べ物にならないほどの税金をおさめることができたはずの人を、ハードな労働で使いつぶし、再起不能にしているのだから、働き方が過酷すぎる社会は、めぐりめぐって結果的に国の弱体化を招いている。
働いている人であればわかると思うけれど、どんな上司にあたるか、どんな仕事が降ってくるかなんてほとんど運だ。
氷河期世代は、政策によって意図的に非正規雇用が増やされた世代である。
非正規になってしまった人というのは、たまたまちょっとしたボタンの掛け違いがあっただけという場合が非常に多い。
図書館の女性もそうだ。体を壊さずにそのままバリバリ正社員での勤務を続けられていれば、貧困とは無縁のままの生活を享受していたはずだ。
月に100時間の残業をこなし、生き生きと働いていたかもしれない。
彼女の過去の同僚は、いまだにこの環境でハードに働き、それなりの報酬を得ているかもしれない。 手を伸ばせば届くような距離に撤退せずに済んだ人がいるのも、彼女たちのつらさを大きくしていると、私は思う。
世の中には生まれつき強靭な人もいれば弱い人もいる。
某ワタミなんかは強靭な部類になるんだと思うが、ああいうのを基準にしてしまうと当然だがブラックな職場になるし、心身を病んで退かなければいけない人が出てくる。
初めから少し弱い人くらいを基準にしておいたほうが、圧倒的に働ける人の数そのものは増えるのだ。
いま、働く女性の7割近くが非正規の労働者だ。そして、独身女性の1/3は貧困にあると言われている。
非正規の人の何が難しいかというと、長いスパンでの人生設計が立てられないのだ。
どこでいつ家を買って住処とするか、どのように老後の試算形成をしていくか。
貯蓄もままならないうえに数年後自分が働けているかわからない。
先行きが不透明すぎる。
氷河期世代にこれから待っているのは親世代の介護問題である。
おそらくだが、そのあたりで、追い込まれていく人が多発すると思われる。
今はまだ可視化されていないだけだ。氷河期世代にもまだぎりぎりの若さが残っている。
問題が可視化されたとき、これから10年後くらいに、あまりにも救いがなくなった氷河期世代に爆発的に自殺が多発するのではないか。私は危惧している。
このニュースは、私は逆に「えっ。たった4人に1人なの!?」と逆に驚いてしまった。
ネットでの調査であるから、信憑性はちょっと疑問だが、氷河期世代だけをとってみたらもっともっと割合は増えるのではないか。
ちなみに私自身も同世代で自殺によって亡くなってしまった知人が数人いる。
氷河期世代はよく棄民された世代だと言われているが、いざ渦中にいるとひしひしと感じる。
一体どうしたら氷河期世代は救われるのか。
なかなか答えがでないが、なんとかして活路が見いだせないかとよく考える。
おわり