先日、こんな増田があった。
まだ若いころ、私にも「いつか銀座でお寿司をつまんでみたい」というほのかな願望があった。きっと、めくるめくような体験なのだろうと思っていた。
だが、とある理由でその思いはほとんどなくなってしまった。
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今から20年ほど前、大学生だったころ、友達に東京の大学へ通っている子がいた。
この人は非常におもしろい人生の人で、あれやこれやといろいろなバイトを体験していて、その話を聞くのがまたおもしろかった。
この子が、銀座でお水のホステスのバイトをしていたのだ。
そこがすごい高級クラブで、女子大生は東大とお茶の水、早稲田慶応あたりの眉目秀麗な女子しかやとわない。(この友達はめずらしい東大生女子)
しかし客層がすごい。友達は「村○さんはよく来た」と言っていた。
そういうレベルの客層なのである。
当時、村○さんはテレビで報道されない日はないくらいに時の人だったから、話を聞いて「おお、すげえ…」と思ったものである。
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そんなところでバイトをしているものだから、彼女は感覚がだいぶ普通と違った。
クラブの客から株券をポンともらったとも聞いた。(よい時代である)
銀座の高級クラブのしきたりはよくわからないが、同伴とかいうやつで客と寿司屋にも行く。増田が行っていたみたいな、一人3万円〜くらいのまわらない寿司屋だ。
彼女がある日けっこう衝撃的なことを言っていたのだ。
「こないだ、すぐ近くに香水ムンムンの同業者が座ってて。ものすごい匂いで味なんか全然わからないの。同業者だしどこの店かもわかってるんだけど。お寿司は高いけどそもそも自分のお金で食べてるわけじゃないから何も痛くないけど」
彼女は、両手で目の前の空気をばさばさとかきわける仕草をして、「あれは本当にくさかった〜!」と言っていた。
私はこれはなかなかの衝撃であった。
そうだ、夜の蝶は個人差はあれ、香水くさい可能性が高いのだ。
この友達はたまたまそういった類のものをいっさいしない人だったが、夜の蝶の中では希有な方だろう。鼻がひんまがるほどの香水をつけた人も全然珍しくないのだ。
私みたいな庶民にとって、一人3万円のお寿司なんて、かなり貴重な体験だ。
それが香水の匂いにまみれていたらどうなるか。
後からそういう客が近くに来ることは、こちらにはどうにもできない。
もし、そんなことになったら貴重な体験はめちゃくちゃな思い出になってしまう。
そんなの嫌だ。
そうか…銀座の高級寿司屋は、高級クラブの客とホステスが同伴で使うんだなぁ…
そう思ってから、 あこがれのような気持ちがどこかへプシュー…と消えてしまった。 お寿司の値段が高ければ高いほど、残念度が増して行く…。
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「マンダリン・オリエンタル・ホテル」の寿司屋には行ってみたい気持ちをそそられるときもあるが、高所恐怖症なので、どこまで楽しめるかわからない。
しかし、香水や柔軟剤の匂いをぷんぷんまわりに振りまきながらお寿司屋さんへ来るのは、やっぱりまわりの客に迷惑だと思うのは私だけだろうか。
おわり