けっこう毛だらけ猫愛だらけ

いつもニャーニャー鳴いています。

発達障害女性の生き方とは(長文)

先日、こんな記事があった。

www3.nhk.or.jp

  宇樹さんはこの業界では有名人だから、登場するのかなと思っていたら宇樹さんであった。宇樹さんに罪はないのだが、「男に頼れてあなたはよかったね」と思われてしまう作りになってしまっているのはどうしてもいなめなくて、そこが残念な記事だと思った。

 

宇樹さんにとって、大きな支えになっているのが夫の存在です。インターネット上で、毎日の生活の苦しみをつづっていたところ、のちに、夫となった男性から「つらそうで見ていられない」と手をさしのべられたといいます。 

 

News Up 生きづらい… 発達系女子の“トリセツ” | NHKニュース

こういうケースには大抵配偶者がいて、いない場合の処世術はあまり語られない。また男性だと脱出が難しい現実も。

2019/11/19 16:04

b.hatena.ne.jp

News Up 生きづらい… 発達系女子の“トリセツ” | NHKニュース

安定の「パートナーが支えになってくれています」系記事。パートナーがいないと結局無理だから記事にもならんのだろうなあ

2019/11/19 16:47

b.hatena.ne.jp

 

 こう書くと身も蓋もないのだが、私も夫という存在に救われた一人で、夫がいなければおそらく今ここにこうして生きていることもないし、ブログ記事を書く事もなかったと思う。(あとになって夫もまた発達障害らしいというオマケがついてきたが) 

 

私を救ってくれたのは、夫が送ってくれる数万円の仕送りと、10年ほど前から患っていた難病によって得た障害年金だった。これで私は生き延びた。紐をタオルでぐるぐる巻きにしたものを自分で作製して、それをもちいて自殺しようと思っていたし、自殺する場所まで細かく決めていた。(一度これで首を吊った)

  

 どういう尺度なのかわからないが、私の場合は発達障害では障害年金は取れないと医師から言われていた。ASDに加えてADHD、LDも抱えているのだが、このへんは一体どういう基準なのかよくわからない。障害年金自治体によって差があること、過去に厚生年金を支払っていた人が優遇される等の基準があって審査の内幕は闇である。

 

 

 この記事を読んで残念だったのは、発達障害の女性がどうして困っているかがあまりしっかりと描かれていなかったことだ。

あくまでも自分が見てきた範囲で困りごとを書くと、

 @仕事に就けない、続かない、業務を遂行しうるだけの能力がない。

 @人間関係がうまくいかない。認知の歪みから頻発する対人関係トラブル。

 @体調が安定しない。業務を続けられるだけの体力、精神力がない。

 @能力が低いことでまわりについていけない。周囲に迷惑をかけてしまう。

 @人生で度重なる失敗が多く、自己肯定感が低いため、精神的に不安定になりやすい。

 @金銭の管理ができない。そのことによってまわりに迷惑をかけてしまう。

 @すぐにパニックを起こして混乱する。まわりを巻き込むこともある。

 @二次障害(鬱、双極性障害統合失調症その他すべての精神疾患)による生活への悪影響。

 @働くことはできても経済的に自立できるレベルまで届かない。

 @生活能力が壊滅的になく、一人ではまともに生活ができない。

 

 発達障害者は個々人によって特性の出方が違うので、いちがいにこうと言う事はできないのだが、おおまかに書くとこんな感じだろうか。自分が見てきたかぎりでは、女性は金銭面での管理ができない人が多くて、そのことで困っている人も散見される。

 

では、パートナーとなる男性が現れなかった場合、発達障害女性はどのように生きて行くのが一番よいのだろうか?

発達障害自体がまだ新しい概念のため、ロールモデルがあまりないのが現状であるが、自分の知っている例だと生活保護を受けている人が圧倒的に多い。生活保護は最後のとりでだが、「男」というセーフティネットがない場合、ストンとそこに行き着いてしまうのは当たり前の話という感じでもある。

独身でもしっかりと働いて経済面でも生活面でも自立できればそれで良いのだが、発達障害の女性だとこういう人はいても少数である。頼る人はいない、さりとて仕事もできないとなると、頼るのはおのずと行政になる。

 

 @障害年金生活保護を受ける。

 @支援センターなどで金銭管理のサポートをつける

 @大きなトラブルがなければ親元にいるようにする。少なくともホームレスにはならない。

 @生活保護障害年金を受けながら、作業所などで社会復帰をめざす。大企業の障害者枠での採用や公務員の障害者枠での採用、配慮のある企業が見つかれば超ラッキー。

 @できるかぎりSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)などの訓練を受ける。

 @就労可能な場合は、できるかぎり自由裁量度の高い職業を選択する。

 

…こんな感じだろうか。ようは頼るのが男か自治体か、という話になってくる。

 

実は、私はこの記事にこんなコメントを書いた。

 

News Up 生きづらい… 発達系女子の“トリセツ” | NHKニュース

先月、発達障害を苦にして自殺した女性の話を聞いたばかり。パートナーが見つからない発達女性の場合、死がパックリと口を開けて待っているイメージすらあります。女だがトップブコメの感覚はよくわかるよ

2019/11/19 19:30

b.hatena.ne.jp

 ここで内容を書いてもおそらく個人特定には結びつかないと思うのでかるく書かせていただくが、亡くなったくだんの女性は看護師の資格を持っていた。しかし人の命を扱う病棟で働くにはあまりにも危険だとのことで、医療事務の資格を取ってそちらに移った。だが、短時間で正確な診療計算を行わなければいけない部署で発達障害によるミスが頻発、クレームの嵐となった。何年か頑張ったが、もともとが発達障害だからケアレスミスが減ることはなく仕事での失敗が積み重なるばかり。結局、ある日焼身自殺してしまった。

 この話を聞いたときに思ったのは、この人は非常にまじめてすごく頑張ってきたのだろう。しかし能力が足りなかった。一人で頑張って社会を生き抜けるだけの能力がなかったのだ。 できることなら自分のちからで生きて行きたかったろうと思う。しかしながら正確さとスピードが要求される現代では無理だったのかもしれない。病院にこだわることもなかったのだが、本人は病院で働きたかったのかもしれない。

しかし焼身自殺はあまりにもむごい。

私は、障害のある人は障害だからと割り切って、行政の援助や支援を受けてほしいと思っている。しかしその割り切りができないのもまた発達障害の特性だったりもするので、そこが難しい。

 

 

  NHKの記事では宇樹さんご夫妻に子供がいるかどうかは不明だが、実はけっこう多いのが、

発達障害が軽度で、それに気づかないままで結婚した女性が出産後、子供に発達障害があるのがわかり、もしや自分も?と調べてみたら発達障害だった」

というパターンである。

 

このパターンだと、じょじょに生活にほころびが生じていって、離婚してしまう話もちらほら聞く(もちろん離婚しない人もいる)。

ちなみにこのくらいのレベルの発達障害女性だと、仕事も軽くなら出来、結婚するくらいのコミュニケーションスキルは持っているという場合が多い。だからこそ気づかないままで結婚出産にいたるわけだが、このパターンだと「母子そろって発達障害のシングルマザー家庭」が出来てしまって、子供の障害の程度にもよるが、就労不可能という場合も多い。このタイプの家庭は母親側の実家に頼って生活している例が、私の見てきた限りでは多い。わけあって実家に頼れない場合、どうしても生活保護という感じになってしまうのが現状だ。

 

 ■

 

 NHKの宇樹さんの記事を読むと、まるで男に頼ることを推奨しているかのようにさえ見えてしまうが、タイミング良くパートナーを見つける事ができずにずっと苦しみ続けるシングル女性もいるわけで、やはりそこは対象として取材してほしいところではある。

 

 振り返ってみると、私がこのブログを書き始めたころ、私は発達障害は自分のせいだと強く思っていた。だから自分がカタをつけなければならないのだと思っていたし、働けないのも生きづらいのもすべてこのように生まれた自分の責任だと思っていた希死念慮がきわめて強かったのも、もとはその考え方からである。

だが、最近少しずつ考え方が変わってきて、障害を負って生まれたのは誰の責任でもないと開き直れるようになった。

 

発達障害のうちの「自閉スペクトラム」の特性を持つ人は案外多くいて、それが子供に遺伝するかとか、どのくらいの程度で遺伝しうるかはもはや運でしかない

ただ、今の時点でも、発達障害で年金をもらえるのはかなりラッキーな部類だと思うし審査に落ちる人もいる。これからの日本で障害年金の審査は厳しくなる一方だが、発達障害者は増える一方である。政府の政策によっては突如年金が打ち切られることもある。ここをどうしていくのかという問題がある。

(以前から書いているが、私は安楽死推進派である。障害を負って生まれることが誰の責任でもないからこそ、安楽死を認めてしかるべきだと思っている。

タンパク質の焦げる匂いをまき散らしながら死ぬことがどれほど残酷なことかと、くだんの女性の話を聞いて涙が出た。これからの日本に、弱者を守って行く余裕がもうほとんどないことも現実として考えるべきだと思う。なお、この人以外にも私は焼身自殺をはかった発達障害の当事者を知っている。幸いにしてこちらの人は生還、今は啓蒙活動を行っている)

 

 

ちなみに、私は「発達系女子」という呼び方はきらいである。なのでこの記事ではもちいていません。

 

 

 

おわり