けっこう毛だらけ猫愛だらけ

いつもニャーニャー鳴いています。

無題

今日のブログにはメンタル系の重い話が含まれるので、いやな人はリターンしてください。

 

 

 ここ数年、私は近所の公園のゴミ拾いをしている。そこで色々な知り合いができた。こうして顔見知りになった人の中で、コロナ自粛期間ほとんど会わなくなったAさんという70歳くらいのおばあさんがいた。

 先日公園にいたところ、たまたまAさんが向こうから歩いて来るのを見て手を振った。

近くに来たAさんを見てびっくりした。目が落ちくぼみ10歳くらい老けた感じ。そしてげっそりと痩せこけていた。

思わず「痩せましたね!」と言うと、突如Aさんが「私、精神病なんです…」と言い始めた。心の中で「ええ…」と思いながらも私はこの後、Aさんの話を数十分に渡って聞くことになった。

 まだ20代のはじめに突然発病したこと、それから寛解期を経て結婚したが夫のDVによって離婚したこと、そこからは懸命に働いてきたが2年前に突然また職場で発病して救急車で運ばれてそのまま入院したこと。今年になって炊事をするのが困難になり食べることすらままならなくなってげっそりと痩せてしまったという。

 参ったのは、Aさんの希死念慮がかなりひどく、「つらくてつらくて…今すぐにでも死にたいです」とか、「あの川に飛び込んだら死ねるのかなとか思うんです」とかボソボソと言われるのがキツかった。具体的な死に方を話されるたびに腹の奥に冷たい石をねじこまれているような感じだった。

 

 Aさんには一人息子がいて、この息子が30代後半なのだが、「新しい車が欲しい」という理由でサラ金から借金、その肩代わりをAさんに頼んできた。それをAさんが拒んだところ息子は怒ってそれからAさんと会話すらしなくなってしまった。

 Aさんがもし、強い希死念慮に耐えかねて自殺をしたら、おそらく第一発見者は息子で、遺体確認するのも息子になるのだが、これは息子からすればだいぶ迷惑な話であろう。精神を病んだ家族がいるというのはそれだけでなかなかにきついものなのだが、いつ死ぬかわからないという人を身近に抱えているのは、それはそれで精神的な重圧がある。

 全国的に見れば、Aさんのような今後に課題を抱えた家族は何十万、何百万人にものぼるわけで、今後、行政はどのように対処していくつもりなのだろうか。家族がみろ看病しろといっても限界がある。結局、どうすれば良いのか解決策が見つからないまま、時が来たらなるようにしかならないのが現状である。難しいものである。

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 私がびっくりしたのは、Aさんがかつてはこのような人物ではなかったということだ。働くのが大好きで仕事をバリバリとこなし、職場の皆と連れ立って居酒屋でワイワイと騒ぎ飲み、居酒屋からカラオケはしごも頻繁にあり、ハキハキとしゃべりキビキビと動く、活動的な人だったというのだ。今の彼女は頭がまわらないのか話すのもゆっくりで、よちよちした歩き方しかできない。

ほんのわずかな脳内物質の変容が、彼女をこんなにまで変えてしまったのだ。

 

 私はもともと精神論や精神論をぶちあげる人が嫌いだ。というのは、脳内のほんの些細な変化によって人の精神というのはいかようにも変わってしまうからだ。たまたまそのとき、脳や体内の生理環境がうまく歯車が回っていただけの話で、精神論をぶちあげる人自身が、明日脳に変容をきたさないという確約はどこにもない。いつ誰が具合を悪くするかなんてほとんどガチャなのだ。

 

 Aさんはもともとすごく律儀な人だ。私に「聞いてもらってとても気持ちが軽くなりました。ありがとうございました」と何度も頭を下げて帰って行った。

 私はまた、ゴミ拾いを再開した。

 

 

 

 おわり