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発達障害者の恋愛(と結婚)

先日、こんな増田があった。

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結論からいうと、増田がとりたてて心配しなくてもよいと思う。なぜなら人間関係は相性も大きく関わるからだ。

 この増田と、くだんのアスペルガーの人が、日常生活の中でどのようなやりとりを交わしているのかがわからないため、どうしてそこまで増田が恐怖をおぼえているのかが私にはわからなかった。私はアスペルガーといえども計算に強いタイプのアスペ人ではないから、この人のいう「人と物、数字の区別があいまい」みたいな特性を持っていない。だからこの人の恐怖感がちょっとしっかり伝わってこなかったし、アスペルガーサイコパスみはまた別かなとも思ったりした。

 

 私はよく、アスペルガーの人について、「アプリが入ってないんです」という説明をすることがある。スマホにアプリが入っていなければそのアプリの機能が使えないのと一緒で、定型の人がデフォルトで装備しているはずの機能をそなえていないのがアスペルガーである。だから、後から「こういう時はこう発言する」とか「こういう時はこうふるまう」というアプリを入れてやって、そのインストールが無事に成功すると、その人は機能不全から脱出する場合がある。(あくまでも成功した場合で、だめなこともある)

 

 私は発達障害者むけのコミュニティに入っているのだが、そこにいるとじつにいろいろな話が耳に入ってくる。

少し前に聞いて「ああ…」と思ったのだが、とある人が住宅ローン(団信つき)の審査を申し込んだが、発達障害を理由に審査が通らなかったという話があった。

実は住宅ローンの審査はそこまで厳しくはなくて8割くらいは審査が通る。

発達障害の診断を受けた人は、申告義務があって、障害があることを申告しなければならない。私がこのことを知ったのは、借金玉さんtwitterからだった。

twitterで「団信 発達障害」と検索すると、発達障害を理由に審査に通らなかった人のツイートがいくつかヒットする。

 私の入っている発達障害のコミュニティの男性のおうちでは、審査が通らなかったことにショックを受けた奥さんが「もう離婚だ」と言いだしてしまい、いまものすごくゴタゴタしている。離婚を言い渡された旦那さんのショックも大変なものだ。

この人もそうだし、増田で登場するアスペルガーの人もきちんと仕事をできているから、発達障害の中ではすごく軽度な部類だ。(発達障害だとまともに働けない人はゴロゴロいる)

 増田に出て来るアスペルガーの人も、すでに診断がおりているなら、団信の審査に通らない、保険に加入できない等のハンデキャップがあることを最初から認識しておく必要があるし、将来的に結婚を考えているのなら相手にもそれを伝えておかねばならないと思う。

 本当にたまたまなのだが、この話のあと、審査をする側の人と話をする機会があった。この人に、自分が発達障害だとは明かさずに「なんで発達障害だと審査に落ちるんですか?」と直球で聞いてみた。すると、発達障害の人は精神障害におちいるリスクが通常よりも高いこと、それによって働けなくなるリスクが通常よりも高いこと、また、過去の団信のデータなどから総合的に判断して審査結果を出すのだそうだ。

 団信はうごく金額がすごく大きい。下手すると数千万を保険会社のほうがかぶることになる。だから審査は厳しくても仕方がないだろう。

ここはすごく難しいところで、私自身はこれを差別だと感じるときもある。だが、アスペルガーの人の精神疾患や自殺リスクが高い事はまぎれもない事実で、これを覆すことは容易にはできない。

 

 

 私の知人に、こんな女性がいる。彼女はとある男性に猛烈にアタックされて結婚し、子供を二人もうけた。夫は正社員でごく普通に働いていて、なんの問題もなかった(はずだった)。ところが子供の様子がどうにもおかしい。検査をしてみたら二人とも発達障害であることがわかった。それを知った夫が「自分もそうかもしれない」と言いだして病院へ行った。結果、夫も発達障害だった。それを知った夫は「おれは発達障害だから」と言って突如仕事を辞めてしまった。夫が働かなくなって3年、ついに限界を感じた彼女は子供を連れて家を出た。夫は実家へ戻り、そこでニートになってしまった。

 

 実はこのような話はネット上にごろごろ転がっていて、この知人だけがとりたてて珍しいわけではない。「夫が発達障害だとわかっていたなら絶対に結婚しなかった」とか「せめて子供には遺伝してほしくなかった」「子供を作らなければよかった」という話はもうそこかしこにある話である。夫のことを強烈に憎んでいる人や、それを伝えなかった義父母を恨んでいる人も多い。

 いわゆるカサンドラ症候群になってしまって、妻自身も鬱になって働けないとか、そういったこともけっこう聞く。怨嗟ともいえるようなお話があちこちにあるので、苦しみの声とともに把握しておくとよい(かもしれない)

 

 だが、冒頭の話ではないが、アスペルガーの人にもそれぞれにベースとなる性格があるし、相性がよく、生活上にトラブルが起きなければ、案外仲良く夫婦生活をいとなんだりもする。男女ともにありうるのだが、伴侶を得た事で心がものすごく落ち着いて、別人のようになる人もいる。

 

 これは私が思うだけの話なのだが、アスペルガーの人の何が嫌われてしまうかというと、自分の痛みにはすごく敏感なのに、相手の痛みにすさまじく鈍感なのだ。だから「自己中」とよく言われる。アスペルガーの人が他者の心を傷つけて気持ちを踏みにじった話はもうはいて捨てるほどある。ここをなんとかできないかと画策しているのが、浜松医科大などでとりくんでいるオキシトシンの治療であるが、効果のほどはまだはっきりしない。

 アスペルガーそのものを治す薬は現在のところ存在しない。このあたりもしっかりと相手に伝え、理解を得る必要がある。男性のほうが二次障害のために薬を服用している場合、それが胎児に影響を及ぼすかどうかもしっかりと確かめたほうがよい。

 

 同時期にこんな増田もあった。

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 以前、どこかで、私のことを「反出生主義だから好き」と言う人がいたのだけれど、私は反出生主義ではない。優生思想に近い思想を持っている。これは自分が障害者に生まれたことの反動である。

 

 私が子供のころはまだ古い感覚がそこかしこに残っていたから、「きれいな子が欲しければ便所掃除をしろ」とか「色の白い女の子が欲しければりんごを食べろ」とかいう言い伝えがあった。科学的根拠は何もない。だが、こういったことを言う年配の人はとくに珍しくもなんでもなかった。

 女性が妊娠したときに「障害児が生まれるといいね」とか「頭の弱い子だといいね」という人はまずいない。赤ちゃんを妊娠したら、なるべくなら健康な子、障害のない五体満足な子を願うのは当たり前の話だ。はじめから「私は障害児が欲しい!」と願う人はおそらくいない。

 無事に生まれたら生まれたで、今度はできるだけ育てやすい子がいいし、いつも笑顔で元気で明るくてよく眠る子で病気やアレルギーがない方が助かるし、できればほっといても勉強ができてほしいし、良いルックスに育ってほしいし、いずれは良い職業について欲しいと願う。

そして、道をはずすことなく良い人生を送り、またさらにその子孫を残して行ってほしいと願う。これはごく当たり前の感覚だし、そうやって人間は代々子孫の反映を祈ってきた種族なわけである。

 優生思想はじつはこの社会に蔓延している。このような社会では容姿端麗で眉目秀麗、心身が強靭で病気をせず、プロポーションの良い個体が圧倒的に有利である。この逆の人だと苦渋を強いられる。

 

 発達障害者の場合、高確率で子供に発達障害が遺伝する。確率は4〜8割とか言われているが、これはガチャそのもので、生まれてみないとわからない。

だから、発達障害者が子供を望む場合、遺伝しない可能性に賭けるよりは「遺伝したときにどうするか」というのを先回りして動いたほうが現実的で賢明である。

また、このことをしっかりとパートナーと話し合う必要がある。

 発達障害の当事者が、遺伝のことを知識がなかったのかなんなのか知らないが、子供を作って、あ、また発達障害だった、でももうしんどい、この子もう育てられません、私障害だし…、というのはさすがに無責任すぎると思う。だが実際にはこういう人もいるので、何とも言えないのが現実である。

 

 以前、「障害者だけど子供が欲しい」という増田があって、それに対して私が「遺伝のことをどう考えてるの」というコメントをつけたら、「こんなことを言う人だなんてショック…」みたいなことを言われてしまったのだが、発達障害者が子供をもうける場合は、遺伝についてしっかりと考え、金銭的、肉体的、環境的に余裕があるのかをしっかりと冷静に考える必要があると思う。ここはきれいごとぬきに考えないといけないと思う。子供自身の将来とか人生のためにも。

 

 これはまた発達障害のコミュニティで聞いた話だが、もう数十年前の話。発達障害という概念すらない時代だ。とにかく仕事が続かない、どこへ行ってもクビになってしまう息子、富裕層の親がビルを3、4棟買って与え、表向きはビルの管理の仕事をしているという人の話を聞いた事がある。お金は潤沢にあるから、この息子は好きなだけ外車を乗り回し、週の半分くらい沖縄に遊びに行ったりして、ようするに遊び暮らしていた。仕事にまつわるストレスがないから精神的に病むこともなかった。

 発達障害の人の人生は大きくお金で左右される。生まれ落ちた家がそれなりにお金があって、適切な療育を受ける機会があれば、かなり社会適応できる可能性があがる。

そういった機会に恵まれなかったり、生まれた家が極貧だったりするとお金のために軽犯罪をせざるをえなくなったり、いま話題になっているケーキを3等分できない子という状態になってしまったりする。

 「仕事ができないからビルを親に買ってもらった」というのはあんまりにもレアケースだが、ある程度お金がないと地獄を見るのはあきらかで、もし子供を持ちたいと思うのであれば財政状況はかなりシビアに考えておいたほうがいいと思う。子供のために不動産投資をするとか、もし社会適応できないレベルに障害が重度だった場合、どうするのかというのは真剣に考えておかねばならないと個人的には思う。

 

 

 これはちょっと余談になるのだが、発達障害の人で、寂しさを強く感じたり、不安を強く感じたりする人は多い。それ自体が一種の特性なのだが、他人に強く依存するタイプの発達障害の人もいて、こういう人は他人を強く求めるから、猛プッシュのすえに結婚したりもするのだけれど、依存をする方は心地いいのだが、依存される方はたまったもんではない。このバランスの均衡が崩れ、関係が破綻することがある。

 発達障害の人はもともと、他者との心理的距離感がうまくとれない人が多い。この人は味方だと認識したとたんに相手に甘えはじめてしまうことも多い。

 だが、もともとどのくらいの距離感が適切なのかがうまくわからないから、それこそ夫婦なんかになると、どこまで依存してよいのかはかれなくなってしまって、それこそ極端にパートナーにべったりと依存したり、これもまた破綻の原因のひとつであろう。

 

 

 

……とか、いろいろ書いてきたけど、あくまで増田は第三者なのだから、アスペルガーの人の人生だし、かりにそのお相手の人がその人と結婚したとしても、大人になった人が自分で結婚を決めてるのだから、それで良いのではないでしょうか。

 

 

 

おわり